インビザライン矯正を検討中の方のなかには、虫歯が心配な方もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論からいえば、インビザラインに限らず矯正治療中は虫歯リスクが高まります。
本記事では、インビザライン矯正で虫歯になる原因をわかりやすく解説。虫歯になりやすい箇所(好発部位)もお伝えします。
万が一、虫歯ができた場合の対処法や予防する方法についても説明していますので、インビザライン矯正を検討中の方はぜひご参考にしてください。
目次
インビザライン矯正中に虫歯になりやすい理由
「インビザラインはワイヤー矯正より虫歯になりにくい」とよくいわれますが、決してそうとは言い切れません。理由としては、口の中に装置を長時間装着する必要があったり、歯磨きが難しくなったりするためです。
ここでは、インビザライン矯正中に虫歯になりやすい理由について詳しく解説します。
口の中が乾燥しやすくなる
インビザライン矯正中に虫歯リスクが高まる原因の1つに、口の中の乾燥があります。
インビザライン矯正では、1日に20〜22時間以上もマウスピースを装着しなければなりませんので、口の中が乾燥しやすくなる傾向にあります。
また、インビザラインのマウスピースは歯に密着しているため、唾液が歯にまで十分に行き届きません。つまり唾液で潤わず乾燥していると細菌が繁殖しやすく、虫歯が発生しやすい状態になるのです。
唾液による自浄・殺菌作用が弱まる
唾液には食べかすや汚れを洗い流す自浄作用や殺菌作用、再石灰化を促す作用などがあります。これらの作用によって虫歯を予防できるのです。
しかし、インビザライン矯正中は口の中が乾燥しやすかったり、唾液がマウスピースの中まで行き届かなかったりすることから唾液の作用を十分に得られません。結果的に、虫歯になりやすい環境となってしまいます。
アタッチメントに汚れが溜まりやすい
インビザライン矯正では、アタッチメントと呼ばれる突起物を接着します。
マウスピースを固定したり、効率良く歯を動かしたりする目的で使用されるものですが、このアタッチメント周辺に汚れが溜まりやすくなります。
アタッチメントを接着することで歯の表面に凹凸ができるため、歯ブラシの毛先がうまく当たらずに磨き残しが発生しやすくなるのです。
磨き残しは虫歯の原因になるため、アタッチメント周辺はより丁寧な歯磨きが必要でしょう。
インビザライン治療中に虫歯になりやすい箇所
インビザライン矯正中に特に虫歯が発生しやすいのは以下の4箇所です。
- 歯並びが悪い箇所
- 歯と歯の隙間
- 親知らずの周辺
- 詰め物・被せ物の隙間
それぞれの虫歯好発部位の特徴を詳しく解説します。
歯並びが悪い箇所
歯並びが悪い箇所は歯ブラシの毛先が当たりにくいため、虫歯になりやすいといえます。歯ブラシを歯に真っ直ぐ当てていても、歯並びがガタついていると歯ブラシの毛先が浮いてうまく磨けないことが多いのです。
歯並びが悪い場所は、タフトブラシと呼ばれるヘッド部分が小さい歯ブラシを使用したり、縦磨きで1本ずつ磨いたりするなどの工夫が必要でしょう。
歯と歯の隙間
歯と歯の隙間は食べかすや汚れが挟まりやすく、虫歯になりやすい箇所です。なぜなら歯と歯の隙間はとても狭く、歯ブラシが入りにくいため。歯ブラシだけでは十分に汚れを除去できません。
さらに、歯と歯の隙間に虫歯ができても気付きにくいため、歯間ブラシやフロスなどの補助清掃用具を使用して、丁寧に磨くことが大切です。
親知らずの周辺
親知らずは1番奥に生えていることから歯ブラシが届きにくく、虫歯になりやすいといえます。
また、親知らずは真っ直ぐきれいに生えているとは限りません。斜めに生えていたり、半分歯茎に埋まっていたりすることもあるのです。そのような生え方をしている親知らずは特に汚れが溜まりやすいでしょう。
虫歯リスクが高く、すでに虫歯が進行している親知らずの場合は、矯正治療前に抜歯を勧められることもあります。
詰め物・被せ物の隙間
詰め物や被せ物の治療をした箇所は、経年劣化から隙間や段差が生じることがあります。
すると、隙間や段差に汚れが溜まりやすく、再度虫歯になる可能性が高まります。治療済みの歯はもう虫歯にならないということはありません。
むしろ一度治療したことがある歯のほうが再度虫歯になる可能性が高いため注意しましょう。
インビザライン矯正中に虫歯が見つかったときの対処法
インビザライン矯正中に虫歯が見つかった場合、虫歯の大きさや矯正治療の進行状態によって対処法は異なります。
虫歯の状態が重度であるほど、矯正治療に影響しやすいため、気になる症状があれば早めに歯科医師に相談したほうがいいでしょう。
ここでは、虫歯が見つかった時の対処法について説明します。
応急処置を行って矯正を優先する
虫歯が小さく、すぐに進行しないと判断された場合、虫歯の応急処置を行って矯正治療を優先することがあります。矯正治療が終盤でも、虫歯が進行しないよう応急処置をして、矯正治療を先に終わらせる場合もあります。
しかし虫歯は応急処置をするだけでは治りません。虫歯治療を受けるタイミングを歯科医師と相談しましょう。
矯正を一時中断して虫歯の治療をする
矯正治療を中断して虫歯治療を優先するケースもあります。虫歯によって強い痛みが出ている時や、虫歯が重度まで進行している場合です。
このような状態になっていると矯正治療を続けられないため、一時中断して虫歯治療を優先します。
虫歯は大きければ大きいほど治療回数が増え、大掛かりな治療が必要になります。虫歯治療中にマウスピースを装着できないこともあるでしょう。
マウスピースを装着できなければ、矯正治療を進められないだけでなく後戻りを起こす可能性も高まります。
矯正と虫歯の治療を同時に進める
矯正治療と虫歯治療を同時に進められることもあります。虫歯がそれほど大きくない場合は、虫歯部分を削って歯科用プラスチックで詰める治療で済ませられます。
1日で虫歯治療を終えられ、歯の形が大きく変わることもないため、そのままマウスピースを使用できます。
インビザライン矯正中の虫歯を予防する方法
インビザライン矯正中に虫歯ができると、治療期間が長引くなどのリスクを伴うため、虫歯ができないよう予防することが大切です。
インビザライン矯正中に虫歯を予防する方法は以下の6つです。
- 丁寧に歯磨きをする
- フッ素入りの歯磨き粉を使う
- 歯間ブラシやデンタルフロスを使う
- 飲食中はマウスピースを外す
- マウスピースを清潔に保つ
- こまめに水分補給する
それぞれの予防法を詳しく解説します。
丁寧に歯磨きをする
インビザライン矯正中の歯磨きは特に丁寧に行いましょう。インビザライン矯正はマウスピースを1日に20〜22時間以上装着する必要があり、1日のほとんどがマウスピースを装着している状態です。
磨き残しがあると唾液の自浄作用も十分に期待できないため、長時間汚れが付着したままになってしまいます。
マウスピースを装着する前には丁寧に歯磨きをして、マウスピース自体もきれいに洗浄しましょう。
フッ素入りの歯磨き粉を使う
フッ素入りの歯磨き粉を習慣的に使用することも虫歯予防効果があります。
フッ素には歯質の強化、再石灰化の促進、虫歯菌の活動を抑制する効果があります。そのため、虫歯から歯を守り、歯質を強くする効果が期待できるのです。
フッ素入りの歯磨き粉だけでなく、歯科医院での定期的なフッ素塗布、フッ素洗口液なども併用すると虫歯予防の効果がより高まります。
調整日などに、クリーニングと一緒にしてもらえるか相談してみましょう。
歯間ブラシやデンタルフロスを使う
歯磨きを行う際に歯間ブラシやデンタルフロスなどの補助清掃用具も使用するようにしましょう。
歯と歯の間の隙間や、歯と歯が接している面は歯ブラシだけでは十分に汚れを除去できません。
そこで歯間ブラシやデンタルフロスを使用することで、歯と歯の間の隙間や、歯と歯が接している面の歯垢除去率は大幅に上がります。
飲食中はマウスピースを外す
インビザライン矯正では、飲食中にマウスピースを外さなければなりません。マウスピースを装着したまま飲食をすると、器具が破損したり、虫歯リスクが高まったりするためです。
飲食時にはマウスピースを外し、再度マウスピースを装着する前に歯磨きとマウスピースの洗浄を行ってください。
お茶も着色しやすいため、マウスピースを外して飲んだほうがいいでしょう。また、熱い飲み物はマウスピースが歪んだり変形したりする原因となります。
マウスピースを装着したまま口にできるものは水だけと考えておきましょう。
マウスピースを清潔に保つ
虫歯を予防するためには、マウスピースも清潔に保たなければなりません。
マウスピースを外したあとは流水下で指や歯ブラシを使用して優しく洗い流しましょう。歯磨き粉を使用すると研磨剤によってマウスピースが傷つき、余計に汚れが付着しやすくなる可能性があるため避けてください。
また、定期的にマウスピース専用の洗浄剤を使用すると清潔に保ちやすいためおすすめです。
こまめに水分補給をする
インビザライン矯正中に虫歯を予防するには、こまめな水分補給も必要です。
インビザライン矯正は長時間マウスピースを装着しているため、唾液の分泌が減少して口内が乾燥しやすい状態になります。お口の中が乾燥すると細菌が繁殖しやすく虫歯や歯周病リスクが高まるのです。
こまめに水分補給をしていると、食べかすなどの汚れを洗い流せるだけでなく、お口の中を潤わすことが可能です。細菌の繁殖を防げるため、虫歯予防にもなります。
水であれば、マウスピースを装着したまま飲めますので、こまめに水を飲むようにしましょう。
インビザライン矯正の虫歯に関するよくある質問
ここではインビザライン矯正の虫歯に関するよくある質問をまとめました。
インビザライン矯正中の虫歯が不安な方はぜひ参考にしてください。
インビザライン矯正で虫歯が見つかると作り直しになる?
インビザライン矯正中に虫歯ができた場合、矯正治療の進み具合や虫歯の程度によって対処法が異なります。小さい虫歯であれば、虫歯治療と矯正治療を同時進行できることが多いでしょう。
しかし、虫歯が大きくなると型取りをして詰め物や被せ物を装着する治療が必要になります。そうすると最初と歯の形が変わってしまうため、マウスピースがはまらなくなる可能性もあるのです。
マウスピースを装着できないほど虫歯治療で歯の形が変わってしまった場合は、器具を作り直さなければなりません。そのため、治療期間が長引くこともあるでしょう。
矯正前に虫歯が見つかってしまったら?
矯正前に虫歯が見つかった場合は、虫歯治療を優先して行います。虫歯を放置したまま矯正治療を進めると、途中で虫歯が進行し、虫歯治療によってマウスピースが合わなくなる可能性があるからです。
そのため、矯正治療を始める前には、お口全体の状態を詳しく検査します。虫歯だけでなく歯周病の状態も調べ、矯正治療を開始する前に虫歯や歯周病の治療を行います。
リテーナー装着時に虫歯になってしまった場合は?
矯正治療終了後は、歯の後戻りを防ぐためにリテーナーと呼ばれる保定装置を使用する必要があります。この保定期間中に虫歯ができた場合は、早めに歯科医院を受診し、虫歯治療を受けてください。
虫歯治療によって保定装置を装着できなくなった場合は、保定装置の調整もしくは再作製が必要になることもあります。その場合、製作料など追加費用が発生する可能性もあるでしょう。矯正治療終了後も、虫歯予防を心がけましょう。
まとめ
インビザライン矯正中は、口の中が乾燥しやすかったり、唾液の作用を十分に得られなかったりすることから虫歯になりやすいといえます。
インビザライン矯正中に虫歯になると、虫歯の状態によっては矯正治療を一時中断することもあるのです。虫歯によってマウスピースが合わなくなった場合は、マウスピースの作り直しが必要となり、さらに矯正治療期間が長引くことになります。
計画通りに矯正治療を進めるためには、虫歯にならないよう気をつけましょう。気になる症状があれば放置せず、早めに歯科医院で診療を受けてください。